< もくじ >
カールスルーエ市のゴミ埋め立て地には巨大な発電用の風車が2基立っています(さらにもう1基が計画中)。普通、ゴミの山は土をかぶせて公園などにします。ゴミ埋め立て地は郊外にあるし、周辺より標高が高くなる(約70m)ので風車を建てるには絶好です。
実はこの風車、市が建てたものではありません。個人が会社を作り、市から土地を借りて建てたものです。風車を1基建てるのに約200万マルク(約1億円、建設費込み)かかるので個人で建てるのは大変。そこで一口2000マルク(約10万円)で出資者160人を募って費用の約半分を集め、あとは銀行から借りたそうです。約10年後には黒字になる予定。
会社の代表ミュラショーンさんががこの風力発電所について説明してくれました。風力発電では、発電する時化石燃料を消費しません。風も、もとをたどれば太陽エネルギーによって生まれるもの。経済的な儲けはありませんが『これも趣味の一つ』という言葉が印象的でした。ずいぶんスケールの大きな趣味です。環境保全のためにできることをするという考え方は、規模はだいぶ違うけれど住宅の太陽熱温水器や太陽電池と似ていると思います。
ミュラショーンさんも言っていましたが、将来は化石燃料や原子力に頼らず太陽光発電、水力発電、風力発電、バイオマスを利用した発電(生ゴミから出るメタンガスなどを利用)などですべての電力をまかなうのが理想です。今の技術では難しいですが、将来技術が進歩すれば可能となるかもしれません。
地盤が安定していないゴミの山にこれだけ巨大な物を建てると、倒れないのか心配になります。ゴミの山は今後20年間で約3m低くなると予想されています(1年目は約50センチでした)。風車の下には巨大な円盤状の土台(直径21m、重さ1000トン)が埋まっていて、背の高い風車も安定して立つように設計されています。土台全体が均等に沈下するので塔が傾くことはないそうです。昨年(1999年)12月に最大瞬間風速40m/s以上の大嵐がやってきました。テストとしてはかなりハードでしたが、羽の付け根が少し緩んだだけで倒れることはありませんでした。
風車(1号機)のデータ
塔の高さ:
|
70m |
風車の直径:
|
52m(計画中の風車は77m) |
塔と風車の重さ:
|
120トン(土台1000トン) |
最大出力:
|
800kW(注1) |
年間発電量:
|
1.2ギガWh(注2) |
市の電力買い取り価格:
|
18ペニッヒ/kWh(約9円) (注3) |
必要な風速:
|
3〜25m/s(注4) |
注1:
|
最も効率よく風車が回る時の出力。風の強さは変化しますから、出力は常に変化。 |
注2:
|
一般家庭約400件が1年に使う電力量に相当。 |
注3:
|
法律で市の電力買い取り価格が決まっています。そうでないと他の安い電力との競争に勝てません。これも市の補助の一種です。 |
注4:
|
25m/sになると安全のために操業停止 |
風車(1号機)の発電実績(1999年)
|
発電量(kWh) |
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
|
158 862
142 744
102 406
80 928
61 072
50 938
44 200
53 442
61 976
115 180
91 464
201 804
|
合計 |
1 165 086
|
"Windkraftnalage GmbH & Co.KG(風力発電有限会社)"の資料より
|