さて、クランガルテンを借りたい人はまず口コミや新聞広告などで空いているクラインガルテンを探します。自宅からの距離、立地条件、クラインガルテンの大きさ、設備(電気、水道、トイレの有無など)などの条件を考えて申し込みますが、人気の高いクラインガルテンを借りるのはなかなか難しいことです。希望者の多い協会では空きを待つ人のリストもあります。空いているところが見つかったら(あるいはリストの順番が来たら)そのクラインガルテンの協会員になり、さらに協会と賃貸契約を結んで、いよいよクラインガルテンライフの始まりです!
『私設のクラインガルテンはないのか?』という質問をいただいたことがありますが、結論から言ってありません。クラインガルテンとは各クラインガルテン協会(非営利、協会員自身が運営)が管理している農園を指します。宗教団体や自然農法を実践する団体などが同じような形式で農園を運営することがあるかもしれませんが、それは“クラインガルテン”の範囲から外れると思います。(市によっては自治体が経営するクラインガルテン形式の農園もあるそうです。正確に言ってこれが“クラインガルテン”に含まれるのかどうかは分りません。)
一般的にクラインガルテンの施設は質素なものです。電気や水道の来ていないコミュニティーもあるし、協会員が日曜大工でコミュニティーハウスを建てる協会もあります。土地を市や町から安く借りることができるし、柵の修理やコミュニティーハウスの維持管理も協会員が分担して行うので、賃貸料も安く抑えることが可能です。ドイツにはかなりの数のクラインガルテンがありますから、クラインガルテンと似た形式で私設の農園を作っても商売としては成り立たないと思います。
あるクラインガルテン(約300u)の賃貸料と諸経費(1年間) |
品目
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金額(マルク) |
賃貸料と雑費 |
35
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会費 |
65
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クラインガルテンの月刊誌 |
5
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保険(小屋の火災、盗難) |
84
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電気代(使用量によって変る) |
10
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合計
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199
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* 水道はありません
“賃貸料と雑費”の一部が土地の利用料金ということになります。協会がまとめて市に払いますが、1区画分の利用料金はとても安いですね。これは市の援助の一つと言えそうです。昔つくられたクラインガルテンは街中のこともありますが、多くは郊外にあります。線路に挟まれた土地、道路脇で住宅などには使えないところ、川が増水すると水に浸かる可能性のある遊水地なども積極的に使われています。また、園芸に詳しい人の話では、クラインガルテンに使われている土地は農業などに向かないところが多いとか。見方を変えるとクラインガルテンは土地の有効利用にも役立っています。
“保険の加入”ですが、これは協会員に義務づけられています。いくつかのカテゴリーがあるのでその中から選びますが、保障される金額が高くなるほど保険料も高くなります。クラインガルテンを借りている友人に話を聞くと、ほとんどの人のラウベが泥棒に荒らされたり壊されたりしていますから用心が必要(被害の程度はいろいろ)。コミュニティー(クラインガルテンの敷地)は夜、無人になるのでラウベは泥棒や宿に困る人などに狙われるようです。昨年は、刑務所から脱走した凶悪犯がクラインガルテンのラウベに潜んでいた!
なんて事件も。もちろん“凶悪犯”は特別な話で、クラインガルテンの日常はとても平和です。
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