ドイツのゴミ事情

ドイツでもゴミの処理は大きな社会問題
身近な家庭ゴミについてのレポート

2002/1 作製


< もくじ >
1. 家庭のゴミ分別とゴミコンテナ
  ◆ ピザと包装ゴミ  
  ◆ゴミコンテナ
  ◆ゴミの分別

<順次、以下の内容を追加していく予定>
2. リサイクルシステムのいろいろ
3. 街で見つけたゴミ箱のいろいろ
4. 粗大ゴミの日
5. ゴミの持ち込みセンター
6. 生ゴミ処理施設





1. 家庭のゴミ分別とゴミのコンテナ
ピザと包装ゴミ  
◆ゴミコンテナ
◆ゴミの分別

ピザと包装ゴミ

自宅でこのレポートを作成していますが、部屋を見渡すとびっくりするほどたくさんのゴミ、ゴミ、ゴミ。(マメに掃除をしないのも原因の一つですが、それはさておき…)通常の消費生活をしていれば、どうしても毎日たくさんの家庭ゴミが生まれます。

例えば夕食で食べた冷凍のピザ。直径30pくらいのピザを買うと"紙製の外箱"と"ピザを包むビニール製の袋"がゴミになります。どちらにもグリーンマークがついているので、分別して捨てればリサイクルされるはずですが「2ユーロのピザ1枚からこんなにたくさんのゴミ…」と、いつも複雑な気分になります。そうそう、オーブンで焼くときにオーブン用の紙を敷きますからそれもゴミに。こちらはリサイクルできず、埋め立てか焼却に回されると思います。

ドイツの商品包装は日本に比べれてずっと簡素です(ただし、プレゼントにするときは自分できれいなラッピングペーパーに包む人が多い)。スーパーでの 買い物には"買い物バック"か"買い物カゴ" を持参する人が多く、そういうものが無い人はレジで買い物袋を買うこともできます(買い物袋は30〜100円程度)。袋をもらわない代わりにクーポン券をもらうようなシステムは見たことがありません。"必要なら買う!"、実にシンプルで理にかなったやり方です。

でも、野菜や果物は量り売りなので備え付けの小さなビニール袋(あるいは紙袋)を使う必要があります。それから、ピザでもチョコレートでも値段と大きさの割りに発生するゴミが非常に多い。いつもゴミであふれかえっているアパートの共同ゴミ置き場を見るたび、いくらシステムを整えても100%解決することのできないゴミ問題の難しさを感じます。ドイツでも、ゴミの減量・分別・リサイクルなど市民の意識を高めるのは非常に難しいことですし、まだまだリサイクルできないゴミも発生します。それから、リサイクルできるにしても(市民にとっては)必要ない無駄な製品(例えばほとんど誰も読まない多量のチラシ)が非常に多い。こうしてみると、ドイツでも これから求められるのは"ゴミが出ない・ゴミが極端に少ない流通・社会システム"。例えば「冷凍のピザは10枚一組を紙製の箱だけで包んだものしか売れない。」なんてのはどうでしょう!?

将来の社会像はさておき、今現在のゴミ問題をどのように改善してゆけばいいのか? ここではドイツのゴミ事情をお伝えします。

注)

リサイクルされるもの(ガラス瓶、古紙、金属、etc.)やコンポストで処理される生ゴミなども、ここではまとめて"ゴミ"と呼ぶことにする。


家庭ゴミの収集・処理は、基本的に自治体の清掃局が担っている。


自治体ごとに収集方法や料金が違うが、ここで述べるのは主にmasa@管理人の住むカールスルーエ市のゴミ事情。





ゴミコンテナ
 
家庭でほとんど毎日お世話になるのがゴミコンテナ。ゴミ収集用の大きなゴミ箱なのですが、ドイツ語でContainerというので、日本語読みで(ゴミ)コンテナと呼ぶことにします。さまざまな容量のコンテナがあり、大きさと入れるゴミの種類によって月の使用料金も異なります。市民は家庭から出るゴミの量と家計を考えて適当な大きさのコンテナを市(清掃局)から借ります。一戸建てなら一家庭だけで使う小さめのもの、集合住宅なら共同で大きめのものといった具合です。 コンテナは入れるゴミによって3種類あり、家庭だけでなく飲食店や小売店、事務所などでも使います。

コンテナの種類
@
資源ゴミ用コンテナ

 ・グリーンマークの付いた包装ゴミ
 ・金属・プラスチック・木材・紙・ダンボールなど
A
家庭ゴミ用コンテナ

 ・複数の素材を混ぜて作られているゴミ
 ・分別不可能なゴミ
 (掃除機から出るゴミなど)
 ・他の回収・リサイクルの手段が無いゴミ
 ・Bの無い地区(市の約半分の地区)では、
  家庭の生ゴミもここに捨てる
B
生ゴミ用のコンテナ

 ・台所から出る生ゴミ
 ・庭から出る植物性ゴミ
 (コンポストが無い、コンポストで処理できない場合)
  注) 以下、必要に応じて@を"@資源" 、Aを"A家庭"、Bを "B生" と略す。
 
小さなアパートのゴミ置き場
左から、"A家庭"・"B生"・"@資源"・"@資源"。
3家族くらいが住む小さなアパートで使っているのではないでしょうか。
コンテナは、裏庭、中庭、玄関前などに専用のスペースを作って置きます。

学生寮のゴミ置き場
60人余りが住む学生寮のゴミ置き場。
左から、"A家庭"・"B生"・"B生"・"@資源"・"@資源"。
共同住宅では、各自のゴミ意識が低下しがち。
自分がきちんと減量・分別したからといって、全体のゴミが目に見えて減ることはありませんから。

大型のゴミコンテナ(1.100L)
"@資源"。どういうものを捨てていいか、大きな絵で説明しています。
コンテナの下部にはタイヤが付いていて、清掃作業員がゴミ置き場から通りの清掃車まで押して行きます。
使用料金は1ヶ月120,72マルクで、回収は二週間に一度。

大型ゴミコンテナの開閉
大型のコンテナのふたは、このよう開けることができます。もちろん手で開けられますが、位置が高いし重いので老人や子供は大変です。

ドイツのゴミ回収車の後ろには、ゴミのコンテナを"持ち上げてひっくり返す"装置が付いています。清掃員がゴミの袋を一つ一つ清掃車の投入口に投げ込む光景はほとんど見かけません。清掃員が重いゴミを持ち上げて腰などをいためる心配も少なくなります。
  




ゴミの分別

さて、家庭から出るすべてのゴミを上記のコンテナに捨てられるわけではありません。
他のゴミはどのように処分すればいいのか?
そういう疑問に答えてくれるのが、市の清掃局。私の手元にも、清掃局が作成している小さな 家庭ゴミハンドブックがあります。
◇このトピックではゴミの捨て方・リサイクルの方法を便宜的に
6種類に分けることにします。
@
"@資源"
A
"A家庭"
B
"B生"
C
粗大ゴミの収集
D
ゴミの持ち込みセンター
E
他の回収・処分・リサイクルシステム

ゴミの内訳と捨て方

〜家庭ゴミハンドブックから〜

 @ 
 A 
 B 
 C 
 D 
 E 
* 古タイヤ




 ○ 
 ○
* アルミニウム
 ○ 


 ○ 
 ○ 
 ○ 
* 電池




 ○ 
 ○ 
* 建築廃材



 ○ 
 ○ 
 ○ 
* (台所から出る)生ゴミ

 ○ 
 ○ 


 ○
* 電気製品



 ○ 
 ○ 
 ○ 
* コンピュータ関連製品



 ○ 
 ○ 
 ○ 
* ペンキ・ラッカー



 ○ 
 ○ 
* ガラス
 ○ 

 ○ 
 ○ 
 ○ 
* (庭から出る)生ゴミ
 ○ 



 ○ 
* 木材  ○ 


 ○ 
 ○ 
 ○ 
* コルク(ワインの栓など)  ○ 



 ○ 
 ○ 
* プラスチックなど  ○ 


 ○ 
 ○ 
 ○ 
* 金属
 ○ 


 ○ 
 ○ 
 ○ 
* 油・油脂




 ○ 
 ○ 
* 紙・ダンボール
 ○ 



 ○ 
 ○ 
* 家庭ゴミ

 ○ 


 ○ 

* 有害物質




 ○ 
 ○ 
* 家具類
 ○ 


 ○ 
 ○ 
 ○ 
* 発泡スチロール  ○ 


 ○ 
 ○ 
 ○ 
* 衣類
 
 ○ 


 ○ 
 ○ 
 
注)

表は、家庭ゴミハンドブックからmasa@管理人が作成したもの。


実際は、注釈・注意事項等が多数あるが、表では簡略化している。
そのため、必ずしも正しくない表記もある。



C粗大ゴミの収集、Dゴミの持ち込みセンター、E他の回収・処分・リサイクルシステムについては追加予定のトピック内で説明。

表を見ると、1種類のゴミでも多くの処分方法のあることがわかります。 例えば古紙・ダンボール"@資源"に捨てることもできますが、量が多くなると他のゴミを入れるスペースが無くなるかもしれません。そのために次の月から大き目のコンテナを借りるなんていうのも経済的に無駄な話。また、リサイクルのことを考えても 古紙は古紙だけでまとめて捨てるのが理想です。

他の方法として、"ゴミの持ち込みセンターへ自分で持っていく" "古紙の収集日に出す"の2種類が考えられます(いずれも追加予定のトピック内で詳しく説明)。ゴミの持ち込みセンターは平日の営業時間内なら好きなときに持ち込むことができますから、引越しや大掃除でたくさんの古紙が出たり急いで処分したいときに便利ですが、自分で持っていかなければなりません。 "古紙の収集"は市民団体が行っており、地区ごとに1ヶ月〜3ヶ月おきで回収 に来てくれます。新聞・雑誌・ダンボールなど普段は倉庫に入れておいて、回収日に家の前に置いておくと持っていってくれるしくみ。どちらの処分方法も 無料ですが、日本のちり紙交換のように市民が"古紙を売る"代わりにお金を受け取ることもありません。(注:無料と書きましたが、ゴミ持ち込みセンターは税金のゴミ料金で運営されているし、市民団体は市から補助を受けているので本当の意味での無料ではない。)

とにかく、市民にとってはこれらのシステムを利用すると

     家庭のゴミが減る
    →小さめの(資源ゴミ用)コンテナで済む
    →コンテナの使用料金が少なくて済む


わけですから、直接的な利益があるといえます。古紙を例にしましたが他のゴミも同様で
、市民は家計・リサイクル・環境・利便性を考慮しながら、自分に一番合った処分方法のコンビネーションを選択することができます。
   


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